その連絡を受けたのは、一時間前だった。



「はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、」



家から、全力で走ってきた。背中を流れる汗が水と化し、動かす足が棒となる。それでも、走り続けた。真っ白な建物の中に入って、真っ白な壁を持つ廊下になっても速度を落とさない。




「はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、はあ・・・!」




走って走って走って走った。






「はぁっ、はあ・・・!・・・はあ・・・。」






たどり着いた先に、煙草に火を灯す、あの人。一瞬、本当に少しだけ足が竦んだ。けど、一瞬だけ。すぐに、速度を戻す。




扉に手をかけて、勢い良く開ける。




「・・・・・・・何、息切らしてんの。」


ベッドの端に腰掛けて座っていた。脱色された銀の髪。負けないくらい白い肌。睨みつける瞳は、纏っている服とは到底似使わなかった。それくらい、いつも通りだった。


「え・・・あ、の・・・・走って、きてっ・・・!」
「へえ、こっから結構距離あるのに。」


言いたい事は沢山あった。したいことも沢山、沢山あった。それは、ぜえぜえと音を立てて鳴る肺が阻んでしまう。ああ、早く元に戻って。早く落ち着いて。息が、上がったままで、話も出来ない。それでも、目だけは彼女を見ていた。彼女は僕を見てけたけたけたけた笑っていた。


「こっちおいで。」


体を支えていた手をゆっくり前へ伸ばして軽く手を動かす。まだ、笑ってる。まだ、僕をあざ笑ってる。それでもその誘いに逆らえない僕は、のろのろと、その手を、その温かさを求めて手を伸ばした。


「お、ねちゃっ・・・。」
「お姉さん、か姉って呼びなさい。いつまで子供でいるつもり?」


呆れながら、またけたけたと笑う。僕をあざ笑う。それでも、構わなかった。どう笑おうとどう思っていようと、気にしなかった。お姉ちゃんは僕の肩を掴んで後ろを向かせると、僕を引っ張る。そのままお姉ちゃんの膝の上に座り込んだ。


「うわ、お前重い。」
「うん・・・。」


落ち着いてくる息。大分まともの会話が出来るようになった。けれど、後ろから来る威圧は発言を許さない。細い腕が、ゆっくりとお腹を這ってきて、中心で手が合う。両手の指を絡ませて固定すると、右の肩にずしりと何かが乗っかった。お姉ちゃんの頭だ。


「本当、昔から馬鹿みたいにお姉ちゃんお姉ちゃんだね、亜紀人。男が可愛い子ぶってもキモいだけだよ。」
「うん・・・。」
「しかも今は男に惚れてるって?付き合いだしたらもう私の目の前に顔出さないで。」
「うん・・・。」


僕は、ただただ肯定するだけだった。

























「ねえ、お姉ちゃん。生まれたての僕ってどんなのだった?」
「気持ち悪かった。こんな弟要らないって思った。」




「ねえ、お姉ちゃん。髪の毛はどうだった?」
「ハゲきったジジィの方がよっぽどましだった。」




「ねえ、お姉ちゃん。顔はどうだった?」
「猿より酷かった。」


お姉ちゃんは僕の全てを否定する。僕は要らない、僕は必要ない、僕は生まれてこない方が良かったって。お前は嫌いだ、お前は生きてる価値が無い、お前は役に立たない。毎日毎日、そうやって僕を否定してきた。


「ねえ、お姉ちゃん。僕が生まれた時抱き上げた感想は?」
「人の首絞めてる時の方が力加減の必要性無くてよかった。メンドくさかった。」




「ねえ、お姉ちゃん。五歳の時、走って転んだ僕をどう思った?」
「そのまま頭がカチ割れれば良いって思った。」




「ねえ、お姉ちゃん。僕の事好き?」
「大嫌い。」


僕のお腹を抱きしめる腕に力が入る。それが首だったらどれだけ良かったか。そんな事を思ってるのかもしれない。組まれた指を見ていた視線を上に向けた。目の前には真っ白の扉。きっと扉の向こうにはあの人が居るんだろう。病院なのに煙草を吸うなんて、なんて悪い人なんだ。きっと権力でねじ伏せたんだろうな。ベッドの方を振り向いてみた。お姉ちゃんの肌より白い陶器に一輪だけある真っ赤な花。なんて花だっけ、あれ。名前なんか思い出せない。


「亜紀人、他に質問は有る?」
「うん。いっぱいある。」
「ダルいやつはやめてね。」
「うん。」


肩に乗っているお姉ちゃんの髪から、良い匂いがする。お母さんみたいな匂い。そんな事言うと怒るんだけど。それでも、安心できる匂いだった。肩越しに聞こえる声は、耳を満たしてくれる。ずっとその声を聞いていたいと思った。少し体を傾けると、柔らかい、女性特有のものが背中に当たる。ゆっくり、意識を集中するとその下で脈打つ心臓の音が聞こえた。


「・・・亜紀人、えっち。殴るよ。」
「うん。」


お姉ちゃんは絡めていた指を解いて、グーを作ると僕の頭を殴る。本当に殴った。けど、全然痛くなかった。小突くくらいの、そのくらいの勢い。


「痛くない。」
「フライパンで殴ってあげようか。」
「止めてよ。それは痛いよ。」
「じゃあ止めてあげる。今は。」
「お姉ちゃん、怖い。」
「知らなかったの?馬鹿な弟。」


また、けたけたと笑うことは無かった。ただ、くすくす、くすくす、もっと酷い笑い方をする。僕と言う存在をあざ笑うかのようにくすくすくすくす。


「ねえ、お姉ちゃんに寄りかかってても良い?」
「いいよ。」


お姉ちゃんは指を組まずに手首を掴んだ。もっと、お姉ちゃんと密着する。心臓の音が良く聞こえるようになった。


「ねえ、お姉ちゃん。僕の頭が割れれば良いと思ったのになんで病院に連れてってくれたの?」
「外で死ぬと余計な調査が入るから。」




「ねえ、お姉ちゃん。僕がメンドくさかったのになんで優しく抱きしめてくれたの?」
「そのまま潰れれば良いと思ったから。」


お姉ちゃんは僕をあざ笑う。お姉ちゃんは僕を必要としない。お姉ちゃんは僕が生まれてこなければ良かったと言う。だけど僕がお姉ちゃんを嫌いにならないのは、僕がお姉ちゃんを必要としていて、僕がお姉ちゃんが生まれてきてくれてよかったと思ってるから。僕は、普通に笑うお姉ちゃんが大好きだ。





「ねえ、お姉ちゃん。僕を愛してくれてないなら、」


「なんで僕の事を大事そうに抱きしめてくれるの?なんで名前を呼んでくれるの?」






お姉ちゃんは、答えなかった。答えない代わりに、僕の耳元で、僕にしか聞こえない声量で、言葉を囁いた。



































目を開けると、そこは病院だった。病院の一室。真っ白い部屋。真っ白い家具。そして、真っ白い腕。俺の腹の上にある、腕。ああ、そうか。この腕は。


・・・?」
「なんで疑問系なの。実の姉の腕も解らないの?」


責めるような言い方だった。それでも、口調はとても優しかった。家を出る前に亜紀人と約束した。お互い、と会ってる間は絶対に顔を出さないって。どんな事があっても、顔を出さない。だから俺は亜紀人が何の話をしていたかも、どうやって此処に来たのかも知らない。ただ、体が妙に湿気ているのだけは解った。


「亜紀人は、どうやって此処に来た?」
「走って来たんだって。あの子は馬鹿だから、電車使ってくる頭も無かった。」
「そうか・・・。」


俺は、ただ肯定するしかなかった。耳元で囁かれる声があまりにも優しくて、あまりにも甘美で、その声に集中してしまう。触れている部分が、妙に熱くなる。ああ、俺は何を考えてるんだ。は組んでいた手を解いて、俺の手に触れる。思わず肩を揺らしてしまった。


「手湿気てる。亜紀人、本当に惚れてる男のトコから走ってきたんだ。」
「そうみたいだな。」
「咢は、馬鹿じゃないね。愚かな弟だね。」


は言う。俺は生まれてきてはいけない存在だったって。亜紀人に巣食って亜紀人を糧に生きている。俺が表に出る度、俺は亜紀人を殺してる。亜紀人は何回死んだのだろう?はそう歌う。この、声で、俺を罵る。


「なあ、。俺と初めて会った時、どう思った?」
「要らないのが来た。亜紀人を殺すやつが来たって思った。」




「俺と初めて一緒に走った時、どう思った?」
「ウザかった。トロいと思った。」




「俺が居て、どう思った?」
「死ねば良いと思った。」


どろどろとしたものはなくて、どうでも良い質問にどうでも良い答えを返している。そんな感じ。声は、変わらず綺麗で、耳を通り越して脳まで届いているみたいだった。もっと、もっと声が聞きたい。もっと一緒に居たい。もっと、もっと。


「ねえ、咢。君は本当に愚かだよね。」
「ファック、うるせぇよ。」




「ねえ、咢。君は何回私を姉と呼んだ?」





今度はが質問した。だけど俺は答えない。くすくす、けたけた。くすくすけたけたくすくすけたけた。まるで壊れた人形でも見るように。道端に捨てられている綿を吐き出したぬいぐるみを見るように、笑う。おかしい存在だ、愚かで、救いようの無い、馬鹿なモノだ。そう言っている。この笑い方は、そう言っている。




「ねぇ、咢。君の瞳はどんな『』を映していたの?」

俺は答えない。はくすくすけたけた笑う。




「ねぇ、咢。君の口から吐き出される私の名前にどんな感情を込めた?」

俺は答えない。はくすくすけたけたくすくすけたけた笑う。




「ねぇ、咢。君は私から吐き出される君の名前にどんな感情が籠もっているようにと願った?」

俺は答えない。はくすくすけたけたくすくすけたけたくすくすけたけた笑う。




「ねぇ、咢。君にとってという存在がどういう意味を持っていたの?」

俺は答えない。はくすくすけたけたくすくすけたけたくすくすけたけたくすくすけたけた笑う。止まらない。笑いが止まらない。狂い繰り返される笑い。上下に揺れる、胸。おかしそうに音を出す、喉。全部、から出てるもの。まるでの方が壊れたみたいだ。壊れてるのかもしれない。壊したのかもしれない。


「くすくす・・・ごめんね。ちょっとからからいすぎたね。ありえないこと聞いちゃったね。」
「そうだな。ありえないことを聞いた。」
「けたけた・・・そうだよね。咢のじゃないもんね、その体。咢のじゃない。咢は本当は居ないもんね。」


は寂しさなんて微塵も見せず、反対に嬉しさも見せず、言った。そうだな、俺は居なかった。俺は、居ない。居ない、居ない。ここには居ない。この腕のぬくもりも、心臓の音も、声も聞こえない、髪の色も知らないはずなんだ。


「俺は要らなかったか?」
「うん。」
「俺は此処に居ない方が良かったか?」
「うん。」





「俺は存在しちゃいけなかったか?」


「ううん。」



突然の否定だった。存在に対する否定じゃなくて、存在しない事に対する否定だった。思わず、振り返りそうになる。なるけど、腕と頭で固定されて動かせなかった。


「咢が居てくれてよかった。亜紀人が走れなくなって、それでも走ることが好きだった亜紀人の体をもう一度動かしてくれる人が居て。」
「な、に言って・・・。」


背中がひやりとする。いっきに心拍数を上げた心臓の音がに聞こえないだろうか。そんな心配より、俺を抱きしめる腕がやけに白く感じた事の方が重要だった。


「咢は、自慢の弟だったよ。可愛げ無かったけど、カッコ良い部類に入ると思う。不器用だったけど根は優しい。」
「何だよいきなり。やめろよっ・・・!」


は、俺を否定する。亜紀人を殺す俺を否定する。それは、亜紀人に対しても同じだった。カラスが好きな亜紀人を嫌っていた。男のくせにと否定する。いつもの事だ。毎日毎日、その繰り返しだった。だけど、は海人じゃない。沢山傷つけた後は、それより多く褒めてくれる。矛盾したことを平気で口にする。嫌いと言ったのに大好きだと言う。否定が大きいほど、何倍も何百倍も褒める。それが、終わりだった。俺達の一日の終わりだった。


「家事は手伝わないし人を顎で使うけど、重い荷物は持ってくれるし走るときは手を引いてくれるし、チンピラから助けてくれる。」
「やめろよ、なんだよ、いつもに増して気色ワリィな!」
「なんで?いっつも褒められると喜ぶくせに。」


不思議そうにしている。している、だけ。本当はわかってるくせに、そうやってしらばっくれる。触れてる手が冷たい、首元に有る頬に熱が無い。怖い、こいつが怖くて怖くてしょうがなかった。




「咢、壊れたものは直らないの、知ってるでしょ?」




優しく囁かれた言葉は、諦めた夢のように儚かった。急にぽた、ぽたと、服に水が落ちて、染みる。何滴も何滴も落ちては吸い込まれる。


「咢、泣いてるの?」


言われるまで、これが涙だなんて気が付かなかった。俺としたことが、何が悲しいんだよ。何も、悲しいことなんて起きるはずないのに。けど、止まらなかった。ぽたぽたぽたぽた、止まらない。全てが、止まらなくなってきた。


「昔から亜紀人に似て泣き虫だね。」


涙を拭うの手付きは、しょうがない弟を慰めるようで。無意識の内に、その手を掴んだ。掴んだ手はこれが人の手なのかと疑うくらい、冷たかった。ぽたぽた、涙が増える。やっと今の現状が見えてきたのかもしれない。変えようの無い、止まらない今を。感情も止まらない。俺と言う存在が生まれてから、ずっと溜め込んできたものも流れていく。醜く、なんとも滑稽な感情だ。誰かに言ったら笑われる。そんな事くらい知ってる。だけど、何も止まらないんだ。






「ほしい・・・。」






止まってくれよ。止まってくれないと、俺はまた愚かな弟だって呼ばれなくなるじゃないか。


「ん?」


止まってくれ。終わらないで。終わっちゃだめだ。





、がっ、欲しいっ・・・」





終わるな、終わらないでくれ、頼むから、お願いだから、時間なんか、止まれ、止まれよ。やだ、嫌だ。笑ってくれ、バカなヤツだって笑えっ・・・!


「駄目だよ、咢。私はあげられない。絶対に、あげない。」
「ほしいっ・・・全部、全部っ!」


手も声も指も足も頭も心も体も全部、というものが欲しかった。はけたけたともくすくすとも笑わなかった。あははと、しょうがなそうに笑った。亜紀人が好きな笑い方だ。俺が好きな笑い方だ。一日の終わりに聞く笑い方だ。は子供のように駄々をこねる俺の頭を、ゆっくりゆっくり撫でる。


「あははっ・・・!咢、本当に子供だね。」


何でも良かった。どんな形でも良かった。此処に居て欲しい、行かないで欲しい、俺を見て欲しい。男としてみて欲しい。ほしい、欲しいんだ。それが叶わないならせめて此処にいてくれ。そんな笑い方しないで、くすくすけたけた笑って馬鹿にしてくれ。愚かだと罵ってくれ。その後に、ほんの少しでいいから認めてくれ。それだけでいいから。それだけで満足できるから。



「咢。」
「ほしいんだってっ・・・!!」




「咢、嫌い。」





ぴたりと、部屋中に木霊していたしていた声が止まった。




「咢、大嫌い。」




響く、体の中に響いていく、声。声量自体はそんなに無くて、俺がやっと聞き取れるくらいの、声。




「駄目だってば。私はあげられない、誰にもあげないし、あげるつもりもない。ごめんね。」




そう言って撫でていた手を止めて、俺を腕の中から解放した。背中を押されて、バランスを崩しそうになりながらもなんとか立っていられた。声が、頭の中で繰り返される。













「咢、もうすぐ此処閉まるから、帰りなさい。外で兄貴ずっと待ってるじゃん?送ってもらいなよ。」
「けどっ・・・!」
「亜紀人にもよろしく言っといて。まあ一応挨拶はしといたんだけどね。んじゃね。」
っ・・・!」


もう一度手を伸ばそうとした。最後にもう一度だけ、言って欲しいことがあって。もう一度、もう一度だけ。


「おい、帰るぞ。」


それも、叶わなかった。タイミング悪い。今まで口出ししなかったくせに、今更になって割り入ってくんなよ。お前に用は無いんだ。海人は俺の襟首を掴んだまま振り返る。



「じゃあな。」
「じゃあね。」



。名前を呼んだつもりなのに、声に出なかった。出る前に、俺は冷たい廊下へと放りだされてしまう。強く、乱暴に床に叩きつけられる。すぐさま起き上がると、睨みつけてくる目を睨み返した。


「なっ、にすんだよ海人!!」
「うっせぇクソが!!いつまでガキみてぇにギャーギャー騒いでんじゃねェ!!ウンコクズがッ!!」
「テメェだって解ってんだろ!?が、はッ!」
「あぁ?テメーよりあのアマと長く暮らしてんだ!知ってんだよッ!アイツのことはよぉ!」


顔を上げる。海人は、珍しく苦しそうに顔を歪めてた。良く周りを見てみると、今まで海人が立っていた所には、三十本近くの吸殻が捨ててある。ぎりぎりまで吸われた煙草。俺は、言葉を失った。




「テメーだけだと思うなよ!?クソクソクソッッ!!また檻にぶっこんでやろうかッ!?」




言い足り無そうにしながらも、病室を振り返ると一つ舌打ちして、俺の横を通り過ぎ誰も居ない廊下を歩いていって、消えた。














数分の沈黙。しんとした廊下は、寒かった。近かった部屋も今は遠い。


「・・・亜紀人」
『何?』
「・・・・カラスんトコ帰るか?」
『・・・・・・・・・うん。そうしよう。咢、辛いだろうけど・・・。帰ろう?』
「・・・・・・・・・・・・・・」


立ち上がると、俺も海人が辿った道をそのまま行く。歩く度に、名前を呼ばれている気がして振り返りそうになって、それでも、俺は、涙をだらだら流しながら振り返らなかった。こんな情けない顔、見られたくなかった。












「咢、大嫌い」「き好大、咢」












言葉

次の日昼頃に連絡が来た。 は朝早く様態を急変させて死んでしまったそうだ。あっけなく終わった、という存在病院の先生は笑顔で死んでいったという。死んだお姉ちゃんの頬は真っ白だった。部屋に有った彼岸花、まるでこの日を予想してたみたいだ。葬式に海人兄は普段着で来た。の遺言状には「死んだら殺す」って書いてたんだって。もうお前は居ないのにな。死んだのにね。殺しにこれるなら来て欲しい。もう一度、もう一度だけ会いたいなんて言ったら、泣いちゃうね、お姉ちゃん。





「咢、僕ね、お姉ちゃんになんで僕の事大事にしてくれるのって言ったら、『亜紀人が好きだから』って言ってくれたの。あれ、反対言葉じゃないよね。」
『だろうな。良かったな。』
「咢はお姉ちゃんのこと好きだった?」




『・・・大嫌いだった。』




少し微笑みながら眠るを見て、反対の言葉を言ってみた。












-----あとがき------------------------
・・・ツンデレ?お姉ちゃんツンデレ!?・・・はい、ごめんなさい。黙ります。
ヒロさんは末期の病気、だったらしいですね。長くは無い事を悟り海人さんパシって二人を呼んだ、と。ヒロさんは海人さんより年下です。妹です。亜紀人は『お姉ちゃん』としてヒロさんが好きだったけど、咢は『女』としてヒロさんが好きだったんです。ヒロさんもそれを知ってたけど、死んじゃう自分をいつまでも想い続けられたらいけないと思って最後には大嫌い発言。結局反対言葉だったんですけどね。それが咢に伝わったかどうかは皆様のご想像にお任せいたします。にしてもこのテーブルの色合い、最悪だな(殴)