「はい3・・・2・・・1・・・あけおめー。」
「・・・あけおめーって、お前むなすぃー。」

デジタル時計を見ながら俺らは手に持っていた炭酸飲料のプルタブを開けて乾杯をした。イッキの言うとおり、
男二人人気の多い街中でなんとも虚しいものである。けれど家族と年を越すより友達と越す方が好きな年頃。
しかし、彼女イナイ歴が浅い俺はなんとも悲しいんだ。別れてたったの一ヶ月、原因は沢山ある。馬が合わない、我儘を聞いてくれない、会う時間が無い、夜のタノシイコトが無い。・・・これは関係無いか。とにかく、そんなこんなな理由で別れ話を持ち出したのは女の方だった。振られた側としてこれを嘆かずに何を嘆くというのだ!

「イッキぃー、テメェ女のアテねぇのかよおぉ。」
「バカヤロー。あるわけねーだろ。あったらテメェとなんか年越すかヨ。」
「だよなあ。俺もテメェの顔拝むより彼女とキスの一つでもしてた方が良かったわ。」
「そりゃ一月前のナシだろ。今を認めろ。お前は俺らと同じ負け組みだ。
「ざけんな。つか、お前林檎チャンは?」
「ちげーし。彼女じゃねーし。」
「へー。ふーん。」

意外だったが特に気にする内容でもなかったので適当に相槌をうちながら、自棄が回ったのか炭酸飲料を一気に飲み干して缶を適当に放り出した。まったくもってこの世の中は不平等だ。それに独り身には過ごしにくい。あーあ。目の前を行き来するカップルどもはどいつもこいつも腕を組んで歩いてやがる。おいおい、そんな俺らを惨めにしたいか。

「イッキさんよぉ、テメェA.Tでこのバカップルども蹴散らしてこいよ。俺が許す。」
「はぁ?んなの自分でやれよ。お前だってA.T持ってんじゃねぇか。」
「それこそはぁ?だコノヤロー。何で俺がんなめんどくせーことやんなきゃいけねぇんだ。・・・・・よっと。」

俺は寄りかかっていた壁から背中を離して(非常に気が乗らないが)バカップルどもと同じく人の流れに乗ってった。あとからイッキも付いてきて二人で軽くA.Tを走らせながら流れていく町並みを眺める。

一年たったからって特に変わることの無い人や建築物。そりゃそうだ。『新年』なんて、人間が勝手に決めて勝手に祝ってやがるんだけなんだから。宇宙の法則だかなんだかわかんねーけど、そんなんにとってはなんにも変わんねぇ。宇宙は、変わんなく回って回って、いつかは滅ぶ。・・・ふむ。自分としては良いテーマを見つけたな。俺は町並みを眺めながら数センチ後ろを走るイッキに話しかけた。

「イッキ。俺は思うんだよね。地球ってつまんなくね?」
「意味ワカンネー。地球がつまんねぇって何がよ?人間?動物?人生?」
「いや、んなんじゃなくてさ、ただ『生きてる』だけってつまんなくねぇ?って。」
「まあな。つか、星に意思があったらの話だろ。」

いつになく真面目に答えるイッキ。別に真面目になるような内容じゃねぇんだけどな。まあ一意見として取り入れてやろうか。かくいう俺も大分真面目に考えた事がある。それじゃあ『生きてる』だけにならない俺達は『生きてる』だけにならないように何をすれば良いのか。愛、憎しみ、恨み、妬み、悲しみ、楽しさ、寂しさ・・・どれも『生きてる』だけにならない理由としてありなんだと思うんだけどさ。それが、宇宙と地球には無いのだ。もしあったら今頃俺達はさっさと地獄なり宇宙外なりに叩き出されてると思うんだよね。

「だからさあ、俺らは星の分まで人生エンジョイしてかなくちゃいけねぇって思うんだよネ。」
「そうかぁ?お前が言う事って毎回毎回意味不明だからよくわかんねーよ。」
「ふ、これぞ稀に見る哲学的な俺。」
ウザ。・・・まあ、天才的な俺中心に回っている世界だからつまんねぇって事はねぇけどな!」
「確かに。お前と居ればあきねぇや。」

一度走ってた足を止めてイッキを振り返る。俺はきっと、とってつもなくいやらしく微笑んでることだろう。別に下心とかそこらへんの笑みでは無い。こいつと居れば楽しいという同意の意味を込めて微笑んだんだ。

「つーことで今年も俺を飽きさせんなよ。」
「お前も俺を飽きさせんなよ?飽きたらソッコー殴るからな。」
「お前こそ。俺らのゆーじょー不滅系?」
「おう、お前に彼女が出来なければな。」
「何ですか、妬みですか。」
「ああそうだよ。悪かったなネチネチしたトモダチで!」
「こっちこそ悪いな、モテモテなトモダチで!」

悪口を言い合いながらも軽く手を打ち合わせるとイッキもまた笑った。彼女が居ない事を嘆いていたが、どうも俺はこういう友情の方が好きらしい。中学卒業して高校入って就職して結婚してガキ作ってジジィになって墓ん中ぶち込まれるまで。ずっとこいつと一緒に居るとは思わないけど、当分はこいつと一緒に居たいと思うんだよね。だって宇宙も地球も感じられないことを感じられるんだぜ?(今更だがそれを持っている人間はつくづく素晴らしく馬鹿で素敵な生き物だ!)枠にはまって生きてるって?枠からはずれりゃ人間じゃねぇだろ。だから俺は人間なんだって。ちょっぴ悪い子だけど。

「彼女出来なかったらお前を彼女にしてやるよ。」
「うわ!キモ!!やめろよマジ気色ワリィ!!」
「ばっか!冗談に決まってんだろ!テメェみてぇなツンツンカラス頭こっちから願い下げだ!」

人間が勝手に作った規則の中で、人間である俺達は人間らしく新年を祝う。ハッピーニューイヤーってな。

「んじゃ、今から彼女いねーやつ片っ端から集めて新年会でもやっか!」
「そーだな。んじゃ俺うっすぃ〜のに連絡取るわ。あいつ起きてっかな?」
「起きてんじゃね?むしろ俺らが声かけんの待ってたりして。」
「かもな!テメェはブッチャとエロブタヨロ。サイコ眼帯ブラザーズは任せろ。」


「行くか。」
「おう。」


次の瞬間、周りの人間おかまいなしに競うようにしてA.Tを走らせる。携帯片手に十分後集合の約束をして俺達は一旦分かれた。こうして新年明けても変わる事無く馬鹿やるのが楽しい深夜一時。俺とイッキの数分間のちょっとした会話だった。




だって俺ら友情に生きる人間じゃん?
(ファック!うっすぃ〜の!振りまくった炭酸飲料開けんじゃねぇ!!)(おいおい怒鳴んなよサイコ眼帯・右目バージョン)(あ、リンゴ?今日帰んのかなり遅くなる。ヨロシク)(テメェ!やっぱデキてんじゃねぇか!!)(デキてねぇよ!)






あとがき
お正月フリー用に書いたやつ。もう手直しする気力すら無いという・・・。

なんとなく友情系を書きたくなってしまいました・・・!第二弾これでいいんですかね?(聞くな)
イッキと主人公の会話だけ。街中で年明けを共に過ごしたお話です。
ていうか男な上名前変換一回しか出てないってどういう事でしょうか!まあ、お正月フリーですもんね!
なんでもありですよね!?(それこそ聞くな)・・・すみません。何故かテンション高くなってしまっています。(ぇ)
なんか・・・会話の内容が宇宙まで行ってますよ。意味不明ですね。自分もよく解りません!(ヲイ)

新年なので新しい形式に挑戦してみました。うーん。普通ですね。
なのにテーブルにかなりてこずったという事実!でも楽しかったです。