夏。 夏といえば海。夏といえば恋。夏といえばスイカ。 そして、夏といえば金銭不足。 今、私はとてつもなく迷ってる。 - summer day - 目の前には皆良く知るロー○ン。 扉の前に立つだけでも解る。中は冷房ガンガンついてて、立ち読みするには最適というべき環境だという事は。 中に入るのは容易だけど、問題はその後だった。 「・・・・97円。」 手の上にある、五十円玉やら十円玉やら・・・。 百円玉が無いのが寂しい。というかむなしい。 友達と海やら遊園地やらいったからもうこのくらいしかお金が無い。 何も買わないのに、お店から出てくるのは少し抵抗があるし・・・。 (へーへー。どうせ私はチキンですよ!鶏ですよ!) 「・・・でも暑い。」 家まで歩いても、このままじゃ暑さとイライラにやられてたどり着けない。 今、こうして悩んでる間も体の真から湧き上がってくる熱に耐えられなくなってきてる。 だったら、ここで涼んでから行くのが妥当なんだけど・・・。 ・・・いいや。大丈夫。 店員さんが見てないうちにロー○ンから出れば全然平気。きっと平気。 大丈夫。なんにも買わなくたって、お店から出れるんだから。 よっし。覚悟決めたぞ。 ピーンコーン・・・ お客さんが来たことをしらせる機械音の後、遅れて店員さんが「いらっしゃいませー。」と言う。 やっぱり、なんか後ろめたい気がするけど気にしない。 気にしてたら、私は一生コンビニには入れなくなっちゃうんだ。 そうけじめをつけて、全身から熱がひくまでの間、扉の傍にある雑誌コーナーの本を読むことにした。 私は、女の人の裸体とか、十八歳未満はお断りされてる雑誌にはまったくもって興味ないから 手ごろの少年誌を手にとってぺらぺらとめくる。 あー・・・今年の秋からこの漫画アニメ化するんだ・・・。 ピーンコーン・・・ 雑誌を読み出して数十分後。 私が入ったときのように、機械音が店内に響いた。 私が入った後、初めてのお客さんだったのでちらっと訪問者へと目を移す。 (もしこれが何人目のお客さんでもちら見してた。悲しい人間の性だね。) 「あ・・・。」 「・・・・あ。」 訪問者と私は、お互いに指を指す。 つんつんの可愛らしい(そういうと本人は激怒する。)髪。 外の暑さに耐えかねた肌はほんのり赤く染まっていた。 そして、何より学校で、戦場で見知った顔。 私の心が、過剰に反応した。 「鵺。」 「。」 うちのチームリーダーの友達のやっているチームが目の敵にしてる、ブラッククロウ。 そこの総長であり、『紫雷の王』であるのが鵺。 もちろん、うちのチームリーダの(以下略)が敵対視してるだけで、私達のチームはなんとも思ってない。 だから、ここで鵺と会ったからといっていきなりバトルを仕掛けるとか、無礼な事はしない。 (というか、バトルしたって私が負けるのは目に見えてるし、好きな人を傷つけて喜ぶようなサドでもない。 ちなみに、私が鵺が好きなのは本人にも、チームの皆にも内緒。) それは向こうも承知してるらしく、少し驚きを隠せないような目で、よぉ。と再度挨拶をしてきた。 「何やってんの?お前。」 「そういう鵺こそ。学校帰り?」 「まぁな。補習やってきた。」 なるほど。だから今日はA.Tじゃなくて普通の靴だったんだ。 学校のA.T規約は厳しい。持ってくだけで廊下へゴー。 流石の鵺も、学校ではA.Tを履いてない。(持ってきてるけど。) 「私は家帰るまで体持ちそうになかったから涼みに。」 「ふ〜ん。」 あまり興味なさそうにそう言うと、鞄から自分の財布を取り出して現在所持している残金を確認してる。 「は何も買わないのかよ。」 「遊びすぎてお金足りない。只今の全財産97・・・あ、もう一円あった。98円。」 「・・・馬鹿?」 「しょうがないじゃん。お金は消費していくものなんだよ。」 まだ、夏休み始まって三日しかたってないけど。 そういうと鵺ははぁ。と溜め息をついて、呆れたのかなんなのか解らないけど、 自分の用事を済ませに店内を見て回る。 まあ、私も唯雑誌読んでてもつまんないし。鵺についていくことにした。 それに気が付いて、ちらっと私をふりかえると、鵺は飲料コーナーで足を止める。 「何か飲みたいもんあるか?」 「え?買ってくれるの?」 「ジュースくらい安いし。」 「やった!」 私はガッツポーズを作って、早速ジュースを手にとる。 鵺も四ツ矢サイダーを手にとって、次はアイスを何個か見繕うと私からジュースを取ってレジへ向かった。 レジの人は手馴れた手つきで商品のバーコードを読み取る機械(名前は知らないけど。)を使ってお金を計算してる。 「761円です。」 そう言って、愛想笑いを浮かべながら袋に食べ物をつめる。 鵺はというと、言われたとおりお財布から小銭を取り出していた。 ちらっと中を覗いてみると、お札が二枚も入ってた。その二枚が万なのか千なのかは判別しかねないけど、 羨ましい事には変わりない。 「あ、一円足りねぇ・・・。、一円くれ。」 「うん。」 私は、ポケットから一円を取り出すと鵺に手渡す。 それでぴったりだったらしく、レシートと商品を受け取ると私を招いて外へ出た。 「・・・あぢー・・・。」 外に出た瞬間、蝉のうるさい泣き声と、夏特有のジメジメした暑さが舞い戻ってくる。 「暑い暑い暑い暑い。」 「しょうがねぇだろ。夏なんだから。」 「夏のバカヤロー!」 ・・・とりあえず、今ので行き行く人々に変質者扱いされたのはわかった。 はずかしいっ! 「・・・で?鵺は何やってるの?」 「A.T履いてる。歩いて日陰があるトコまで行くのはイヤだろ?」 「まあ。でも、私A.T持ってないんっ・・・!」 だけど。と言う前に、鵺は私をお姫様だっこすると、いっきにA.Tを走らせた。 夏とは思えない涼しい風が頬をかすめて通りぬけていく。 「お。思ってたより軽いな。」 「それって私が重そうに見えたって意味!?」 「・・・・・・・・・・・・・・・。」 目を逸らされた。 絶対重いっておもってたなコノヤロウ。 あ、でも・・・。鵺ってやっぱり良くみるとカッコいいなぁ。なんて思ったり。 「? 俺の顔になんかついてんのか?」 「いや?別に?」 通り過ぎる人に顔を見られるのも、この火照った顔を鵺にみられるのもイヤだったから、 鵺の胸に顔を押し当てた。 鵺が好きで好きでたまらない気持ちを抑えるのにも、丁度良いと思ったけど余計顔が熱くなって。 「・・・暑い。」 苦し紛れに夏のせいにする。 「夏だからな。」 「でも暑い。」 公園の日陰につくまで、ずっと暑い暑い言ってた。 鵺もそれに答えて、ずっと返事してくれてた。 公園で、鵺と買ったジュースを飲んで、アイスを食べて。 他愛の無い事を話して、笑って怒って不貞腐れて慰められて。 キスされて。 告白されて、私も自分の気持ちを伝えたらまたキスされて。 その日は、幸せでいっぱいだった。 「「あ。」」 次の日。 今日の試合相手のリーダーを指差して、相手も私を指差した。 「・・・今日、私試合なんだけど・・・。」 「俺も。」 「相手がブラッククロウだなんて聞いてなかったんですけど。」 「お前んトコのトップが敵討ちしてぇとか言ってきたんだけど?」 とりあえずリーダーをボコっといた。 (そういえば、リーダーの友達のチーム、鵺に潰されたんだった・・・。) 敵討ち。それは別にいいけど、相手が悪いという事を心得てもらいたかった。 私たちのランクはB。勝てる可能性は非常に低い。 ・・・負け決定だよ。ララバイ。私のチーム生活・・・・。 そんな時、黙って私たちのやりとりをみていた鵺が口を開いた。 「・・・エンブレムは要らねぇ。」 「「は?」」 リーダーと私はアホっぽい顔して鵺をふりかえる。 私たちの視線の先には、ありえないほど楽しそうに微笑む彼。 エンブレムが要らない?それじゃあ、試合する意味が無い。 「その代わり、お前のチームのをもらってく。」 リーダーは笑顔でそれを承知した。もちろんもう一回ボコったけど。 いや、鵺のチームに行くのがいやなんじゃなくて(むしろ嬉しい)、 普通、簡単に自分のチームメイトを売るか? やっぱ、断った方が 「交渉成立。」 ・・・今から、無かったことにするのは無理に近い。 一時間後、完膚なきまでに叩き潰された元・チームを抜けて、 ブラック・クロウに引き取られたのでした。 あとがき 久々更新になってしまってすんませんっ!短編書くの久々です・・・。 今回は、ちょっと書き方変えてみようと思ってトライしてみましたが、見事撃沈。 もう慣れない事やるのはやめようとおもいました。 省略していったなんていえn にしても、名前変換少なっ!(汗) |