とつぜんですが、私たちのおうちには、私たちの大好きな人が居ます。




みんな、みんなが大好きなのですが、仲良しの大好きとちがう大好きの人が居ます。
一人は、鵺っていう私たちのリーダーです。私たちはA.Tをやってます。そのチームのリーダーです。
いっつも私たちのことを考えてくれて、ひっぱってくれるぶき用だけど走りはすごい人です。
ただ、おこると本気できます。子ども相手にむきになるなんてって思うけど、鵺もけっこう子どもです。


もう一人は、ちゃんです。ちゃんは、春休みに鵺が連れてきてくれたおねえさんです。
ちゃんとか、姉とか、とか呼ばれてます。みんな大好きです。なんで大好きかっていうと、
お料理がおいしくて、かじもできて、おもしろくて、あそんでくれて、とてもやさしいからです。
あと、あまり見たことはないんですが、トリックがとてもきれいだから好きな子もいます。
ちゃんは、私たちのだいじなおねえちゃんです。でも、ちゃんがおこるとこわいです。
鵺におこってる時がとてもこわいです、きしんのごときです。だから、わるいことはしちゃいけないです。


この二人が、私たちの中心です。だから、二人がケンカすると、私たちはとてもこまります。
めったにしないのですが、たまに、すごーいことになります。






























あーもー、どうすればいいんだろうこの状況。


「だから、ごめんねってば・・・。」
「だから、怒ってねぇってば。」
「怒ってるじゃんか、機嫌悪いじゃんか!」
「機嫌最高にいいぜ、俺は。」


目線がどうしてもこっちに向いてくれない。ずっとA.T雑誌に釘付けで、あからさまに拒絶されてる。
朝からどうしたの、なんて、理由が解っているのに聞くのも馬鹿らしい。溜め息が出た。



まあ、なんだろう。つまり、鵺が気に食わないのはハロウィンという行事で。
ハロウィンという行事より、気に食わないのが、私なんだろう。



「今日夕メシいらねーんだろ?帰りは朝か?」
「・・・そんな棘々しい言い方しなくても。」
「別に、普通だし。」


今日、私はイッキから小烏丸のハロウィンパーティに誘われていたんだ。
いつもの如く断ろうかと思ったけど、彼らの基地に入れる機会なんて滅多に無い。
即答で飛びついたはいいものの、家に帰ってから自分の行動が浅はかだったと思い知らされる事になる。


鵺が、思いっきり眉間に皺を寄せたのだ。元々イッキたちが好きではなかったのは知っている。
だけど、ここまで怒るなんて思ってもみなかった。なんでそんなに怒るか解らないけど、
とにかく苛々してる。




「・・・勝手にいけばいーだろ。」




それが昨日の夜最後の会話になったのは言うまでもない。
そして今、夜から継続して機嫌の悪い鵺は学校に行く気配さえも無い。
また、溜め息が出る。時計を見れば遅刻ぎりぎりの時間だ。
そろそろ私も学校に行きたいんだけど・・・。


「そんなに不貞腐れてると放っていくよ!」


そろそろ私まで鵺の苛々が感染してしまって、思い切り机を叩いて言えば、やっと顔を上げた。
口元にはニヒルな微笑み。感染した苛々が鵺にリバースしてしまったようだった。


「そうだな、放っといてくれてもいいぜ、好きなとこ行けよ。」
「あーもう!なんでそんな言い方するの!?鵺がキレるなら私もキレるよ!家出するよ!?」
「おーおー、好きなだけしてこいよ居候。」


これはもう、本格的に喧嘩を売られてる。居候だって、元々鵺が強制的にさせたのに!
殴るわけにもいかず、ここで怒鳴ったって効果はないだろう。


「もう知らない!」


そう怒鳴って、私は家を出た。













ケンカといっても、いっつも鵺がいっぽう的におこってちゃんをこまらせているんです。
このあいだの、ハロウィンの日は、鵺のきらいなおにいちゃんたちとちゃんがあそぶといったので、
鵺はぷくってなりました。「やきもち」をやいてしまったのです。
でも、やきもちをやいてるんだよと言わないので、ちゃんはいつものようにこまってしまって、
私たちもこまりました。さいごにはちゃんもおこってしまって、ぷんすかとしながらいってしまったのです。
そのあと、しぶしぶ鵺も学校に来ました。














鈍感女、あいつ本当に鈍感女だ!!
カラスは好かねぇっつってんのに、嬉しそうにカラスんとこのパーティ行くだの、
ハロウィンだのお菓子だのうかれて、人の気なんかしらねぇで!




「あー、なるほど。鵺はちゃんがカラスくんに盗られるのが気に食わないんだ。」
「・・・・・・・・・・・・・うるせぇ。」


人の肩を抱いて、けらけら笑いながらアキラがオレンジジュースを飲み干した。
というか何故お前が居る。何わかるわかるって顔してる。


「君は中々鋭くくるね。その通りだ、鵺くんはちゃんがイッキくんに盗られるのが気に食わない!」
「黙れ変態、俺に触るんじゃねぇ。」


そしてもう一方から同じように肩を抱くスピット・ファイアは消えてほしい。誰だこの変態を呼んだのは。
まあ、家に入れたのは俺なんだけど。自爆行為だったと思うけど、元々そういう予定だったからしょうがない。
暴れまわるガキ共、お菓子をせがむシムカ。どうしても、一人足りない。が居ないんだ。


騒がしい室内を一通り見回したアキラが、困ったように笑いながらまた俺の肩を叩く。




「大体、早めに言っておかない鵺がいけないんだろ?そりゃ、仲の良いトモダチに誘われりゃ行くっしょ。フツーに。」




一口、自分の飲み物を口に含みながら、そういわれて今更ながら自分の身勝手さを悔いる。
そりゃそうだ、家に居るのが当たり前だと思ってるあたり俺の身勝手な欲求だ。
出かけるっつってキレられりゃあいつだっておこる。解ってるのに、こう、苛々する。
つくづくガキだと、痛感してしまうんだ。


ちゃん泣いてたらどうしようねー。」
「イッキくんに慰められて、」
「そのまんま、帰ってこないかもしれないしねー。」


ぐさぐさ棘が心に刺さるようだった。ありえない話じゃねぇ。家出してこいと言ってしまったんだ。













けれど、鵺はいっつもそのあとにこうかいします。あとになって、自分がわるかったこととか、
言っちゃいけないことを言ってしまったことにきづいてしまうのです。鵺はごめんなさいを言いません。
いじっぱりなのであやまりません。だけど、すぐに顔に出るので、みんなわかるんです。
鵺はちゃんに家に帰ってこなくていいと言ってしまいました。それなのに、本当に帰ってこなかったら、
夜おそくなるにつれて鵺の元気は急こうかです。














「・・・っと、ただいまー。」
「あ、ちゃんお帰りー。」


なんだか家の中が騒がしいと思ったら、リビングはどんちゃん騒ぎだった。
散らばるお菓子、物凄い数の飾りつけ、テーブルの上は、惨状。これを片付けるのかと思うとくらりとくる。
・・・絶対手伝ってもらおう。


その酷い有様の中でも、お菓子を見つけ出して口に運ぶ上機嫌な二人が居る。スピットさんとアキラ君だ。
私に気が付くと二人して笑い合う。それから、こいこいと手を振られ間を勧められた。それに従って座れば、
即座に両方から肩を組まれる。え、何この体制。


「二人とも酔ってるんですか。ちょっとスピットさんお酒臭い!」
「いやあ、大人だからね!照れるなぁ!」


照れられても・・・。褒めてないしなぁ。


「ていうかアキラくん、なんなのこの騒ぎは!」
「あれだよ、あれー。シムカ主催のハロウィンパーティ。」


酔いつぶれてしまったのか、だらしなくフローリングの上で気持ち良さそうに眠るシムカさんに頭をかかえる。
シムカさんが何かパーティをやろうと言い出すと、必ずと言っていいほど会場はこの家だ。
・・・というか、パーティやるなら一言言ってくれればよかったのに。


「で、ちゃんの方はどうだった?イッキくんたちとのパーティは。」


そういえば鵺はどこだろうと視線をめぐらせていると、スピットさんがさっきより体重をかけて近寄ってくる。
お酒の臭いで酔いそう・・・。あまりにも嫌だったので、体を押し退けながら答えた。


「見ての通り、早めに切り上げてきましたよ。」


言えば、何故か二人は目を丸くする。なんで、どうしてって顔だ。
私もなんでどうしてって気分だよ。好きなとこ行けばいいだろって怒ってる鵺の所に帰ってくる方がおかしいし。
二人とも話しは聞いてるんだろうな、だから疑問なんだろう。




「だって、そろそろ鵺が落ち込むと思ったから。」




出て行けといわれた私より、言った鵺の方がよっぽどショックを受けてるなんて日常茶飯事だ。
すると、また二人して顔を見合わせてにんまり笑った。さっきからちょっと気持ち悪いよこの二人・・・。


ちゃんは大人だね。」
「鵺くんに見習わせたいよ、まったく。」











それから、二人の圧迫から解放された私は、一言『ソファ』という助言をもとにそこを覗き込んだら、
毛布に包まって眠る鵺の寝顔を拝めた。大分久しぶりに見た寝顔に、近づいてソファに頬杖をつく。
大方、また不貞腐れて寝てるんだろう。私はもう怒ってないのにな。


「本当、口開かなければ可愛いのに。」


・・・起こすのも、なんだか気が引けるし。
折角イッキとの約束を放り出して帰ってきたんだから、起きたら謝ってもらおう。
帰ってくるなといわれても、私は帰る場所が此処なのだから。



「ただいま。」



頬に一つ。お休みの意味をこめてキスをする。起きてる時は絶対しないもんね!













それでもちゃんはすごいので、急こうかの鵺の気分をいっきに治してくれます。
鵺はあやまりません、でも、ちゃんはゆいいつ鵺をあやまらせることのできる人です。













こいつは、なんて鈍感女なんだ!
人がうとうとしてるところになんだってんだ!


「(可愛い言うな、不意打ちすんな!このっ、寝てるか確認してからしろよ!)」
「鵺起きたらどうしようかなぁ。とりあえず明日の朝ごはんにキムチだなぁ。」
「(なんでそんな微妙に不吉なこと口走ってるんだよ!!)」
「鵺謝ってくれないかなぁ。謝ってくれればお味噌汁に七味入れないのになぁ。」
「(辛味攻め!?)」


うきうきと、楽しげに去っていくに、明日朝一で謝ろうと思う。
それから、・・・おかえりも言おう。



「(・・・ぜってぇ、確信犯だ。)」



火照る頬を毛布で隠しながら、しみじみと感じてしまった。

















私は、ちゃんをそんけいしています。だから大好きです。
いつまでも、けんかするほどなかのいい鵺とちゃんがみれればと思います。
私のじまんのかぞくです。













大好きな人たちのこと

「作文の宿題よ。家族のことを書いてくるように。」って先生が。


「あーなんだ。鵺はイッキにやきもち妬いてたの?」
「う、うるせぇ!!妬いてねぇし!!つかお前もなんでこんなの作文に書くんだよ!」
「だって、家族のことを書いてくるようにって言われたんだもん。」
「だとしてもだ!もっとマシなことねぇのか!?これじゃまるで俺がすぐ拗ねてすぐ怒るやつみてぇだろーが!」


「だってねー。すぐ怒るしすぐ拗ねるし。ありのままの鵺だよ。ねー、りーちゃん!」
「そうだよねーちゃん!」
「(も、やだこいつら・・・・!)」


その後、なんとか説得されて新しい作文に書き直したりーちゃんでした。














あとがき
ハロウィン企画でりお様にリクしていただいた鵺でした!


こどもな鵺と大人のヒロさんを、りーちゃんが作文風にまとめた感じにしてみたんですが、
どうでしょうか?(どきどき)日常の、ヒロさんが心配で、過保護にしたい鵺を描いてみたつもりでいます!
けど、駄作にっ・・・!orz


アキラくんとスピさんはむちゃくちゃサブでオプションです(笑)
いつか、ヒロさんとアキラくんの絡みでもと思っております。そしてアキラくんがイッキの事をなんて呼んでいたのかわからないので「カラス」なのですが、あってるでしょうか・・・?曖昧な部分多くてすみませんっ!!(汗)