深夜十時四十五分




活動始也






大量の食器を洗い終わったのが十一時。お酒のいやぁな臭いを我慢しながら散らかった部屋を片付け終わったのは十一時四十五分。心の疲れか、体の疲れか、はたまた両方からの疲れか、体が重くなっているのが解る。もう寝ちゃいたい気分。




「いや、諦めるな。最後までやるんだ俺様。」




ゴミを袋に入れて結びながら自分を励ますなんて、なんてかわいそ、じゃなくて健気なんだろう。生ゴミの臭いが付いたから手を洗って、その後に部屋に戻る。あちゃあ・・・まだ臭い取れないよ。壁紙張り替えたい。


「ちょっと旦那、起きて起きて!」
「むぉお・・・お館様ぁ・・・・・・。」
「ほら、自分の部屋戻ってそれから寝て!」
「お館さむぁあああああ・・・・・。」


ダメだ、完全に潰れてる。(この機会に一発殴っておきたかった。)部屋に転がる男、男、男・・・。見ててやんなっちゃうこの光景。大体、なんでこんな大勢押しかけみたいに来るんだろう。



・・・経緯を思い出してみよう。



なんだっけなー、確か近くで祭りあって、旦那と一緒に祭りに行ったら(駄々捏ねられた。)ちゃんを見つけてよっしゃラッキー!なんて思ってたら吸い寄せられるように邪魔な・・・ああ、いや、竜の旦那とかきちゃってさ。(こいつら引き寄せちゃうはちゃんだ。)



「Hey,これから真田ん家でpartyするぜ!」



って祭りのテンションにヤられた馬・・・竜の旦那が先頭きって押し寄せて来やがったんだ。最初は竜の旦那と数人だけだから大したことになんないかなーとか思ってたのに、ちゃんが、あろうことかちゃんが、皆で一緒の方が楽しくない?なんて言い出すから、調子に乗って旦那たちが、電話で人収集・・・なんていう不幸。大将と旦那と住んでるから必然的に俺が食い物作って酒用意して、なぜか俺の部屋で暴れられちゃって・・・なんで俺の部屋なのよ。客間とかリビングとかあるでしょ。何、いじめたいの、俺の事いじめたいの?なんて、言ったってこいつらはみーんな夢の中。俺の苦労も疲れも知らずにさ。腹立つよなー全員身包み剥いで外に放り出してやりたい。(もちろん本当にそんなことはしない。俺様やっさしー。)


「・・・ん。」


ここに至るまでの経緯を思い出して涙ぐみそうになってたら、声がした。視線をそっちへ移せば余計なやつらを引き寄せてきた張本人が一人俺のベッドの上で寝返りを打つ。床に見当たらないと思ったらベッドに非難してたんだ。懸命な判断、えらい。(こいつらは何をしでかすか解らないしね。)よくよく見ると縮こまってるじゃんか。エアコン付けっ放しで寒かったのかも。急いでベッドに近づいて、足元に押し退けられたタオルケットを掛けてあげればまた何か言う。(因みに野郎共に渡す掛け物は一枚たりとも無い。)


「・・・ん、・・・さ・・すけ・・・?」
「あらら、起こしちゃった?」


ぶつぶつ何か呟いていたのは、寝言じゃなくて覚醒しかけてたってわけね。あーあ、起きなければ添い寝しようと思ったのに。


「・・・今、何時?」
「十二時だよ。」



「う、・・・えぇええぇ!?」


がばり、急いで体を起こしたちゃんの声は、エアコンの稼動音より騒々しくて思わず俺の方がビックリしちゃったよ。


「しっ、ちゃん声おっきい!」
「あ、ごめん・・・。」


急いで口を押さえて、手近にあった携帯を見ると、申し訳なさそうにごめんね、こんな時間まで。って言って髪を整える。常識人・・・此処に、常識を知ってる人が居る・・・。宇宙人を相手にする最中に出会った人類に思えてちゃったのは失礼かな。あ、でもちゃんも乗り込んできたんだよね。・・・ちゃんの身包み剥いでみたい(ん?変態?俺様変態?)


「政宗、元親、幸村・・・あ、慶次まで・・・他のは?」
「明日講義あるからって帰るってさー。ここに居るのは潰れちゃったヒト。」
「そう・・・・って、わ、私は潰れてないからね。飲んで無いから!この年で警察にしょっぴかれるなんてたまったもんじゃない。」


うん、たしかに交番お向かいさんだけどバレないと思うよ?(俺らはぎりぎり未成年。)うーうー唸りながら起き上がると眉を顰めて口を覆ったところを見るとやっとこの臭いに気が付いてくれたのかな。ちゃん下戸だっけ?


「酒臭っ・・・佐助かわいそ・・・。」
「そう思うなら乗り込んでこないでくれる?」
「えー。」


えーってなにー?こんだけやっといてえーってなにー?


「・・・君らのご飯作ってわざわざコンビニまで行っておつまみとお酒買ってきたのは一体だーれ。」
「あー・・・えっと、佐助です。」
「しかも金は俺持ちだったよねー。それにさ、人の部屋でさんざん暴れてご近所からの苦情に対応して、ついでにいやぁな顔されてやったのはだーれ。」
「佐助、さんです。」
「自室に酒と男の臭い付けられた部屋の持ち主は?」
「・・・佐助様です。」
「そんな原因を作る野郎共を掻き集める一言を放ってくれたのは誰だったっけ?」
「ごめんなさいすみません。私です。テンション高くてつい・・・。(黒、佐助笑顔黒ッ・・・!)


にこり、厭味をこめて微笑んで見せれば目をきょどきょどとさせ始めるけど逃げたってだめだよ?(こいつら吸い寄せてきたのは君だよ、そう、君!)


「じゃあ私こいつら起こして責任持って連れて帰るし、その、臭い取れなかったら壁紙とかの張替え代、皆でカンパするから、許して?」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
「ああ!今度ご飯奢る、奢るから!」


俯いちゃった俺の行動を怒ったと取ったのか、どんどん追加されていくサービス。大丈夫、実際はそこまで起こってないよ、俺様ちゃんに限り結構優しいし。むしろその反対。手を合わせて謝ってくるちゃんがあまりにも可愛いかったから思わずたべちゃいそうになる衝動を抑えるのに必死だったなんて・・・言えない。(二人っきり。不覚にも胸がどきどきしちゃう俺様ってオトメ?)いや、言わないけどさぁ。意味解んなさそうだし。


「なら、政宗に言って土下座させる!」
「チカ、元親なら魚だって採って来れるよ!経済的に優しいよオカン!」


彼女が、ちゃんが言おうものならあの二人ならやってのけるだろーなー。ベタなの、ベタ惚れなのよ。けどさぁ、せっかく(雰囲気だけ)ふたりっきりなのにそんなさ、他の男の名前を言うのはいけないよねぇ。(彼女はまだ誰のものでもないので言う権利は無い。けど、反対に彼女は誰のものでもあるのも揺ぎ無い事実。)


「じゃあね、じゃあ、「ねぇ、ちゃん。」
「は、はぃいい!!」


やっと顔を上げられたと思ったら冷や汗やらきょどりやらで面白い顔をしていた。


「静かに。」
「あ、はい・・・。」


そんな彼女の手を取り、指の先にそっと唇を触れさせれば(唇にするとこの子騒ぐから。旦那たちに殺されちゃう。)困ったように俺の名前を呼んで、どうかしたのと言う。どうしたもこうしたも、さっきからどうかしちゃってるんだから。ちゃんって処女かなーそこらへん知らないけどそうっぽいなー。


「お詫びはいいからさ、今から俺様と逃げない?」
「逃げる?何から?」


解ってないなあ。こんな男が沢山いる場所が危なくないほうがおかしいんだって。特に、自分の好きな女の子と一緒に居るとね、(柔らかそうだよなー、肌とか、触ったら気持ち良さそう)頭とか、心がヘンになっちゃうわけよ。今の俺とかそうじゃん。そしたら俺から逃げなくちゃいけなくなっちゃうのちゃんは?それは、や(たべた)だな。よっし、収まった。ちょっとの間だけ抑えられる気がする。


「逃げるっていうか、ちょっと散歩しに行こうよ。」
「散歩・・・!いいね、真夜中の散歩!」


彼女が未知で不思議なものが好きなのを知っている。前に夜の闇を歩くのが好きだって言ってたのも覚えてるよ。その好きっていう感情を少しでも俺に向けてくれたらなぁなんて思うんだけど、どうだろう。それが健全な男だよね。




「散歩っていうか、デートだね?」




二人っきりだもの!って、ちょっとちゃーん。不意打ちって知ってる?そんなにっこりされたら、俺(あーんなこととかこーんな)いや、それこそダメだ。ここでチャンスをふいにしちゃいけない、いけないんだよ俺様ファイト!


「夜はね、昼間と違う部分がいっぱいあって綺麗なんだよ。空気も違うし雰囲気だって、街のネオンだって、全然違うんだよ。すっごい良いんだよ!」
「なに、ちゃんもしかして夜フェチ?」
「マニアって言って。それかマスター!夜の世界の帝王は私だー!」


はいはい、適当にあしらって(ちゃんこどもみたいに目ぇキラキラさせてるよかっわいー)先ほどから掴んでいる手を引いた。すると彼女は予想していたよりもしっかり立ち上がったので、そのまま手を握る(よろけた拍子に抱きしめちゃおう作戦失敗)


「じゃあ行きましょうかマスター。」
「いえっさー佐助隊員!」
「隊員?せめて隊長にしようよ、たいちょー。」
「だーめ。隊長は私だよ。で、私は佐助をしっかり導いて夜のこわい部分から助けてあげるのさ!」


助けるって、俺様幽霊とかそこららへんの類は一切信じて無いから平気だよ、って聞いて無いし。いいか、楽しそうだから。


彼女の子供っぽさを全力で発揮したらこうなるのか。初めて見るよその顔。きっと旦那たちなんか知らないよ俺様ってば抜け駆けー♪夜の顔っていったら卑猥なものばかり思い浮かべていたの、反省しましょ。


「では早速・・・。」
「あ、ちょっと待って。」


早く行こうと手を引く彼女を引き止めた。ごめんね。


旦那たち宛てにちょっと出かけてきます、朝ごはんは冷蔵庫の中。って書いた紙を置いて、携帯と鍵と彼女を持てば準備ばっちり。ふと視線を感じて、手紙を書くのをじぃっと見つめている彼女に何?と尋ねれば


「佐助ってオカンだね。」


と、お言いになられました。それは、冷蔵庫の中身の存在を見て言ってるのか、置き書きをしたことに対して言っているのか解らなかったけどヘコむよ?(だって俺オカンって言われたくて言われてるんじゃないしね!)ヘコんだついでに繋いでいる手の力が緩まったらしく、ちゃんは慌てて違う違うと被りを振った。


「違う、佐助ってさ、優しいねって意味だよ!たしかにオカン気質だけれども!」
「最後は余計だよね。でも、確かに俺様って世話焼きかも。ちゃんとかうちの旦那見てると構ってあげたくなるのよー。」


ちゃんは特別な意味で、ね。って言って笑えば、子供扱いにちょっと不機嫌になたったのか頬を膨らまして早く行こうと急かされた。(最後のはスルーらしいよ。でもさ、佐助って優しいね、優しいねだって。俺様ちゃんから見ても優しいんだってよ!)邪な気持ちは萎え始め、かわりに彼女の言葉が心を満たしてくれる、なんてラッキーなんだろう俺!




「佐助、」
「んー?」
「美味しいご飯のお礼と、お詫びとありがとうって気持ちを込めて、精一杯案内しますよ!」
「それは、・・・俺様の方がもらいすぎじゃない?」
「そう?」




だって、



大好きな君の世界を

歩かせてもらえるんだから。


(キスした手を握って、君と歩いて。まあ、こどもみたいな君にはムードもへったくれもないんだけどさ。)















---あとがき----------------------------------------------
初BASARAは佐助であろうことか現代パラレルになっちまった!(おい)
多分大学生くらい。19とかそこらへんの現代人です。今度は学パロにも挑戦したいなあ。
佐助口調むつかしい・・・!そして毎度の事意味不明DETH☆



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